概要

BSCCOはビットコイン上のライトニングネットワークにおけるペイメントチャネルを、通常のHTLCとは異なるセキュリティモデルで作成し、第三者による支払いの中継にも使用できるようにするCore Lightningプラグインである。

BSCCOを使うことで法的な契約や信用に基づく、ビットコインに裏付けられていないチャネルや、他チェーン上、他通貨で決済するライトニングチャネルなどを作ることができる。

リバランスや決済の手段を増やすことでBSCCOを利用するチャネルの維持コスト削減を実現し、またチャネル開設にビットコインが必ずしも必要なくなることでLN全体の資金効率を改善する。

また、長期的にはビットコインのトランザクション需要の安定化に貢献する。

詳細

BSCCOは、以下の2つのメカニズムによってトラストレス性を妥協できるピア間のライトニングチャネルの実装方法・決済手段を完全に自由化する。

  1. Funding UTXOのOwnerとUserの分離 (UTXOのリース)
  2. チャネル毎にカスタムロジックを設定

ライトニングチャネルのコスト

ライトニングでは多数のペイメントチャネルという2者間のマルチシグで資金が管理されており、送金の多くは複数のペイメントチャネルを経由して目的地まで辿り着く。

ペイメントチャネルは通常、トラストレス性を実現するため双方が最新状態の署名済みトランザクションを持ち合うことで更新されており、また相手が不正をした場合にその資金を没収できるように過去の状態についての情報も保管している。このため、見ず知らずの他人とライトニングチャネルを開いても、自身のノードが長期間オフラインにならない限り資金を盗難される恐れはない。

しかし、このようなチャネルの運営にはチャネル開閉時のトランザクション手数料、故障や障害による強制閉鎖リスクやホットウォレットの盗難リスク、リバランスにかかるコストなどがかかる。

UTXOのリース

ライトニングネットワークではスパムやなりすまし対策として、新しいチャネルの作成や手数料設定の更新時にそのチャネルの資金が含まれるマルチシグアドレスの署名が求められる。チャネルの両側のユーザーによる署名だ。このため、チャネルの作成には必ずビットコインが必要になってしまう。

そこでUTXO OwnerとUTXO Userという概念を分離すると、UTXO Ownerがあらかじめ用意したUTXOについて署名を提供することで、任意のUTXO Userがライトニングチャネルのオンチェーンアドレスとして公表できる。これによって、手数料が安いときにUTXOを作成し、高いときにリースしてもらうUTXO Owner業が考えられる。

この場合はUTXO Userたちはオンチェーンに更新すべき状態を持たないため、何らかのカスタムロジックを用いてチャネル内の帳簿を実装することとなる。状況によってはビットコインを一切持たずにライトニングチャネルを運用することさえ可能になる。もちろんライトニングネットワークの他の参加者にはこの事実は認識されないし、金銭的なリスクもないため、支払いの経路として選んでもらい、手数料を稼ぐことができる。

カスタムのロジック

様々なカスタムのロジックが考えられるが、いくつか可能性を列挙してみる:

名前 説明 トラストの源 ユースケース
Credit Channel 開設時に与信額を設定、トランザクションごとにチャネルバランスをアップデートし、任意のタイミング・方法で決済あるいは与信額を変更する。 法の支配 (契約等)、
社会的信用、
同一人物の複数ノード間 etc. ルーティングの資金効率改善、レンディング
WBTC Channel 手数料の安い他チェーン上にラップされている、あるいは取引所に保管されているBTCの残高を更新していく。不正の証明だけできるモデルからHTLCに基づくセミトラストレスなモデルまで考えられる。 カストディアン、
他チェーンのノード、
法の支配・社会的信用、
HTLC etc. 資金効率改善、
手数料高騰時のBTCチェーン以外の活用、
取引所の死蔵コインの活用
Stablecoin Channel 最終的な決済をステーブルコインで行うCredit Channel
※残高をBTC建てで管理しない場合は悪用リスクあり(後述) カストディアン、
他チェーン、
法の支配・社会的信用 資金効率改善、レンディング、
ステーブルとのブリッジや法定通貨建て残高
Altcoin Channel 最終的な決済をアルトコインで行うCredit Channel
※残高をBTC建てで管理しない場合は悪用リスクあり(後述) 他チェーンのノード、
法の支配・社会的信用 資金効率改善、
アルトコインとのブリッジ

いずれもビットコインブロックチェーンとは異なるトラストの源が必要だが、様々な実装・条件が考えられるのでそのセキュリティのレベルについて一概には比較できない。

長期的な影響